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「ランダムにプレーせよ」?— NBAを席巻するペイサーズの”組織されたカオス”?

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2つのnote投稿に、それぞれ

とても面白いスタイルのバスケットボールを追いかけておりますので、また近々noteに書けたらと思います。

「ランダム」「メス」「カオス」

最近バスケットボール関連の記事などを読んでいると、必ずこういった言葉が出てきます。 

と書きました。

   

これらに繋がる、NBAインディアナペイサーズに関する記事がありますので要約を。

   

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昨シーズン、インディアナペイサーズは1試合平均123.3得点を記録。これはリーグ史上6番目に高く、過去40シーズンのNBAでは最高の数字であり、観る者を魅了するダイナミックなプレースタイルは、まさに現代バスケットボールの最前線と言えるでしょう。この爆発的なオフェンスの中心にあるのは、一体どのような哲学なのでしょうか。

その答えを、チームの司令塔であるタイリースハリバートンは「組織されたカオス(organized chaos)」という言葉で表現します。一見すると無秩序に見えるプレーの中に、実は計算され尽くした意図が隠されているのです。

ペイサーズをリーグ屈指の攻撃型チームへと変貌させた驚くべき原則と、その裏にあるベテランコーチ、リック・カーライルの自己変革の物語を解き明かしていきます。

   

意図的に「ランダム」をプレーする:ペイサーズオフェンスの核心

変な言葉・・・

   

現在のリックカーライルが率いるペイサーズのオフェンスシステムは、逆説的ですが「システムがないこと」がシステムです。もちろん、特定の状況で使うためのセットプレイは数多く存在しますが、基本的にはコート上の選手たちが流れと感覚を共有し、絶え間ないボールと人の動きを生み出すことを意図しています。

毎ゲームの目標は、各選手が「ランダムにプレーする」こと。これにより、ディフェンダーは次に誰が、あるいはボールがどこへ動くのかを予測できなくなります。しかし、このランダム性は真のカオスではありません。すべての動きが連携し、まとまりのある流れを生み出すように設計されているのです。それは、可能な限り頻繁に、適切なタイミングで適切な選手が適切な場所でボールを受けられるようにするためです。ハリバートン自身がこのコンセプトをこう定義しています。

"organized chaos."

   

カーライルの変貌:コントロール重視から信頼を置く指導者へ

この自由なオフェンス哲学が、かつてのリックカーライルのスタイルを知る人々を最も驚かせる点でしょう。彼のヘッドコーチとしてのキャリア初期、特にデトロイトピストンズ時代は、まるで「ハンドルを固く握りしめる」かのようにチームをコントロールし、鉄壁のディフェンスとスローな消耗戦を信条としていました。

しかし、長年の経験を通じて、彼は選手に信頼を置くことの重要性を学びました。彼はレギュラーシーズン通算993勝で歴代11位、プレーオフでは通算79勝を挙げ歴代14位にランクされる、リーグ屈指のコーチです。その彼が自らの哲学を進化させたからこそ、現在のペイサーズは存在するのです。彼のライバルでもあるドックリバースは、カーライルの本質をこう評します。「私の意見では、リックが常に優れている点は、彼が手持ちのチームをコーチするところだ」。

現在のペイサーズで見られる自由なプレースタイルは、この信頼の上に成り立っています。アーロンネスミスは、選手たちの視点からこの自由について次のように語っています。

「コーチングスタッフが僕らに与えてくれる自由だと思う」「僕らはいつもそのことについて話している。オフェンスと僕らを信頼してくれている。チームには素晴らしいオフェンス力を持つ選手がたくさんいるので、僕らはただ試合を読むことができる。」

   

「バカげている」という天啓:ジェイソンキッドが全てを変えた瞬間

カーライルの哲学が大きく転換するきっかけとなったのは、ダラスマーベリックスのヘッドコーチに就任した初期のことでした。当初、彼はすべてのプレーを自分で指示しようと試みましたが、その結果、オフェンスのテンポは著しく低下してしまいました。

転機が訪れたのは、ある日のこと。殿堂入り確実のベテランポイントガード、ジェイソンキッドが、すべてのポゼッションでベンチの指示を仰いでいる姿を見て、カーライルは「これはバカげている(ridiculous)」と悟ったのです。経験豊富な司令塔にすべてのプレーを指示することの非効率性に気づいた瞬間でした。

彼はキッドにチームの全権を委ねる決断をします。この決断が、より「自由な流れのランダムなゲーム」を解き放ち、2011年のマーベリックスのNBAチャンピオンシップ獲得に直接的に貢献することになったのです。カーライル自身が、その瞬間を力強く振り返っています。

「ある時点で、ジェイソンキッドがベンチに指示を仰いでいるのを見ていて、ついにある日、これはバカげていると気づいたんです」とカーライルは言う。「彼に、そういった全てを引き継いでチームを運営するように話そうと決めたんです。プレイをコールするも、しないも自由。ただ選手たちをゲームに没頭させ、リーダーシップを発揮してくれと。」

   

完璧なエンジン:チームの「鍵」となるタイリースハリバートンとの出会い

カーライルのこの哲学を完璧に体現する選手こそ、タイリースハリバートンでした。実は2020年のドラフト時、当時マーベリックスを率いていたカーライルとフロントは、このシステムに最適な選手としてハリバートンを熱望していました。

運命の巡り合わせか、カーライルがインディアナに戻った後、ペイサーズはトレードでハリバートンを獲得します。ハリバートン自身は、キャリアを捧げたいと思っていたチーム(キングス)からの突然のトレードに「ショックを受けていた」と言います。カーライルは、ハリバートンがインディアナに到着した最初の夜のディナーで、ためらうことなく彼に「チームの鍵(the keys to the team)」を託しました。

「彼が歓迎されていると感じてほしかったし、彼が現在だけでなく将来的に何ができるかについて、私が絶大な信頼を寄せていることを伝えたかった」とカーライルは語ります。「チームの鍵を彼が握っていると伝えることが、最初の会話で重要だと考えた。そして彼はそれを気に入り、見事にやってのけたんだ。」

その判断が正しかったことは、すぐに証明されます。ハリバートンがプレーした最初の試合で、ペイサーズはカーライルがそれまでコーチしたどの試合よりも速いペースでプレーしたのです。この瞬間、ハリバートンのユニークなスキルを中心にチームの設計図を構築するという方針が確固たるものになりました。ドックリバースもこの関係性をこう分析します。「彼はハリバートンと組んですぐに気づいたのだろう、『こいつはただ巻き上げて解き放てばいいチームかもしれない』と。だからこそ彼は傑出したコーチなんだ。」

   

進化という名の教訓

インディアナペイサーズの成功は、単に巧妙な戦術システムの勝利ではありません。それは、一人のベテランコーチが自らの哲学を進化させ、選手たちに深い信頼を置くことを選んだ結果です。

ラリーバードらと共にプレーしたIQの高い1985-86シーズンのセルティックスでの選手経験、ジェイソンキッドとの出会いによって得た天啓、そしてタイリースハリバートンという才能との邂逅。これらすべての点が線となり、現在の「組織されたカオス」という究極の形に結実したのです。カーライル自身が、その哲学をこう語っています。

プレイオフのスタイルの一部は、ランダムで予測不可能なゲーム、つまり『フローゲーム』をプレーできることだ…。その責任に伴う信頼を扱える選手、そしてその特権を理解できる選手を獲得しなければならない。

> 元記事


なぜこうも、「カオス」だの「ランダム」だのといった言葉があふれるようになったのでしょうか。

それは、あまりにも進化してしまったデータの、そしてゲームの「分析(アナリシス)」に対する反動と言えるかもしれません。

   

バスケットボールは、これからも、絶え間なく進化してようです。

それでは後日、「とても面白いスタイルのバスケットボール」について書きますのでお楽しみに。

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