2024年、Bリーグで大きなニュースがありました。
バスケットボール日本代表が地元開催で大躍進を遂げた、2023年ワールドカップの王者・ドイツ代表のヨハネスティーマンが、群馬クレインサンダースへ加入。
たしかに、急成長を見せている日本バスケットボールとBリーグですが、現役ドイツ代表が加入するとは。しかも、2022年のBBL(バスケットボールブンデスリーガ)ファイナルズのMVP!
驚きでした。
しかし、それにしても。
なぜヨハネスティーマンほどの選手がBリーグにやって来たのか。
それを知りたく、調べてみました。
以前書いたこちら> NBAに次ぐプロバスケットボールリーグに?Bリーグの外国籍選手と移籍
のとおり、日本、そしてBリーグの成長が著しいのは周知の事実ですが、ドイツ、そしてヨーロッパ側の事情もあるのではないか。
バスケットボールドイツ代表選手の所属クラブは?

まず、ドイツ代表選手の所属クラブを見てみましょう。
選手 | 所属クラブ |
アイザックボンガ | パリチザン(セルビア) |
オスカーダシルバ | バイエルンミュンヘン(ドイツ) |
マオドロー | オリンピアミラノ(イタリア) |
ニールスギファイ | バイエルンミュンヘン(ドイツ) |
ニックワイラーバブ | バイエルンミュンヘン(ドイツ) |
ヨハネスフォクトマン | オリンピアミラノ(イタリア) |
フランツバグナー | オーランドマジック(アメリカ) |
ダニエルタイス | ニューオーリンズペリカンズ(アメリカ) |
モリッツバグナー | オーランドマジック(アメリカ) |
デニスシュルーダー | ブルックリンネッツ(アメリカ) |
ヨハネスティーマン | 群馬クレインサンダース(日本) |
アンドレアスオブスト | バイエルンミュンヘン(ドイツ) |
ドイツBBL所属選手は4人で、いずれもバイエルンミュンヘン(バスケットボールでも最強クラブにのし上がりつつある)のメンバー。
そして、他選手の所属に目をやると、NBAをはじめとした世界有数のクラブがずらり。
失礼ながら、群馬クレインサンダースは明らかに浮いています。(が、ここに名前が並んでいるのはすごいこと!)
なぜヨハネスティーマンはBリーグにやってきたのか。
お金を追って?母国を去るドイツのトッププレイヤー
お金が大きな要因の1つであることは間違いないでしょう。
> こちら(1年前に参照させていただいた記事なのですが、諸事情により書くのが今になってしまいました。。。)が詳しいので要約。
ドイツバスケットボールの隆盛
・BBLで輝きを放ったドイツのトッププレーヤーの多くが国外に流出している。これはドイツの財政状況を深く掘り下げ、他国と比較したものである。
・ドイツがいよいよヨーロッパの、そして世界のバスケットボール界で頭角を現してきた。
・2020年東京オリンピック出場権獲得(出場12か国の1つに入るのは至難。特にヨーロッパからは。)、2022年FIBAユーロバスケット3位、2023年FIBAバスケットボールワールドカップ優勝。
・イージークレジットBBL(バスケットボールブンデスリーガ)はファンの支持も厚く、財政的にも安定、選手への支払いも確実な、強力なリーグとみなされている。BBL所属のクラブもまた、ヨーロッパ大陸の頂点に近づいている。
参照 > 世界のプロバスケットボールリーグランキング*NBA除く
・FCバイエルンミュンヘンは、2020-21年と2021-22年のプレーオフで、それぞれアルマーニエクスチェンジミラン(イタリア)とFCバルセロナ(スペイン)に敗れ、トルコ航空ユーロリーグファイナル4まであと一歩のところまで2度届かなかった。
・ALBAベルリンは2018-19シーズンにユーロカップファイナルに進出し、バイエルンがユーロカップセミファイナルに進出した翌シーズンに、バレンシアバスケット(スペイン)にシリーズ2-1で敗れた。
・テレコムバスケットボンは、2022-23シーズンのバスケットボールチャンピオンズリーグ(BCL)で優勝し、2015-16シーズンのFIBAヨーロッパカップでフラポートスカイライナーズフランクフルト以来となる、ヨーロッパタイトルを獲得したドイツのクラブとなった。
・リーゼンルートヴィヒスブルク(※2025年3月までヘッドコーチはジョンパトリック、アシスタントコーチに佐藤賢次)はBCLで2度優勝に近づいており、2017-18シーズンは4位、2021-22シーズンは3位だった。そしてバンベルクバスケッツは2018-19シーズンのBCLで4位だった。
・ドイツのクラブは、フランクフルトがタイトルを獲得して以来、FIBAヨーロッパカップでも接戦を繰り広げてきた。ヴュルツブルクバスケッツは2018-19にファイナルに進出し、ボンとバイロイトはそれぞれ2016-17と2019-20にセミファイナルに進んだ。
退団相次ぐ、BBLトップ選手
・にもかかわらず、ドイツのクラブは定期的にトッププレーヤーを退団させており、リーグのトップスターの多くがヨーロッパ他地域へと移籍している。
・過去4シーズン、オールBBLのファーストチームまたはセカンドチームに選ばれた40人のうち、21人(!)が翌シーズンにリーグを去っている。
・2022-23シーズンMVPのTJショーツは、ボンのロスターの半分とヘッドコーチのトーマスイサロとともに、ドイツからフランスの新興勢力パリバスケットボールに移籍した(イサロはNBAメンフィスグリズリーズHCに!)。そして2021-22シーズンのMVP、パーカージャクソン-カートライトも、ボンとドイツを離れ、ユーロリーグのアズヴェル(フランス)に移籍した(豪NBLニュージーランドなどを経て、つい先日リトアニアの名門リタスと契約)。
・2021-22年シーズン後にジャクソン-カートライトと一緒に流出したのは、ファーストチームの残りのメンバーだった: マオドロー、ジャロンブロッサムゲーム、デショーントーマス(!)、マイクコッツァー(!)、そしてセカンドチームのジャボンテホーキンスである。
・ドイツを離れる2020-21ファーストチームのメンバーは、トレイベル-ヘインズとジェイレンレイノルズ、セカンドチームのジェイソングレンジャーとシモーネフォンテッキオ。
・2019-20シーズンのトップ10からも4選手がシーズン終了後に出国した。カディーンキャリントンとマーカスナイトは他国への移籍を決めたファーストチームのメンバーで、セカンドチームのスコットエサトン(!)とマーティンヘルマンソンは退団した。
・ドイツのBBLは長い間、ステップストーンリーグ(次のステップへの踏み台となる意味)と見なされてきたが、どうしてそうなるのか。
簡単なことだ。お金だ。
・結局のところ、ドイツのクラブは選手が受け取る金額を同じにするために、海外のクラブよりも多くのお金を使わなければならないのだ。
しかし、それは簡単ではない
・そもそも、ドイツの経済状況を詳しく調べ、バスケットボールの支出面で他国と比較するのが簡単なことではない。各リーグを正確に比較するための情報を得ることは、金庫破りや国家機密を尋ねるようなものだ。
・多くの(ヨーロッパのリーグは、確かな比較に必要な重要情報の公開を、問い合わせに対して拒否している。状況を完全に正確に把握するために必要な主なデータは、リーグの総収入、選手の給与に対するクラブの総支出、選手の給与に対するクラブの純支出である。
(フランスが、大陸で最も透明性の高いリーグの1つである。)
ドイツ
・ドイツリーグによると、子供がいない未婚の選手の場合、純年俸6万ユーロ(およそ970万円)で総年俸13万3500ユーロ(2,160万円)が必要。純年俸12万ユーロ(1,950万円)の場合、クラブの総年俸は24万4500ユーロ(3,960万円)となる。
・ドイツでは、課税所得が11,600ユーロ(188万円)から66,700ユーロ(1,080万円)の場合、個人は14パーセントから42パーセントの間で課税される。27万7000ユーロ(4,480万円)までは42パーセント、それ以上は45パーセントである。 > 参考:日本国税庁のページ
・ドイツ・ブンデスリーガの2022-23シーズンの売上高は1億2750万ユーロ(206億6千万円)で、コロナ禍以前のレベルを初めて上回った。
・リーグの数字によれば、18クラブすべてがBBLの最低予算である300万ユーロ(4億8,600万円)をクリアしている。2クラブが1000万ユーロ(16億2,000万円)以上の収入、5クラブが550万ユーロ(8億9,000万円)から1000万ユーロ、7クラブが400万ユーロ(6億4,800万円)から550万ユーロ、4クラブが400万ユーロ以下の収入だった。まとめ↓
16億2,000万円以上 | 2クラブ |
8億9,000万円~16億 | 5クラブ |
6億4,800万円~8億9,000万円 | 7クラブ |
6億4,800万円以下 | 4クラブ |
・リーグの数字によると、2022-23年に、所属クラブは弁護士費用、社会的経費、給与税、所得税、社会保障費に4830万ユーロ(7億8,200万円)を費やした。これは2021-22年の3740万ユーロ(6億600万円)から増加している。
・クラブはまた、派遣会社、警備会社、銀行、保険会社、その他ドイツの100近いセクターの法定傷害保険機関である使用者賠償責任保険協会(Verwaltungs-Berufsgenossenschaft)に830万ユーロ(13億4,000万円)(1クラブ平均約7,450万円)を支払った。これは2021年から22年にかけての690万ユーロ(11億1,000万円)から20%以上の増加であり、1クラブあたり38万ユーロ(6,150万円)以上の増加である。残りの5200万ユーロ(84億2,600万円)は総資産である。
・リーグにとっての2大収入は、総額8430万ユーロのスポンサー料(136億6千万円)と、2021-22年の1370万ユーロ(22億2,000万円)から2022-23年には2560万ユーロ(41億4,800万円)に跳ね上がったチケット代である。
・ドイツ人は間違いなくイージークレジットBBLに興味を持っており、2022-23シーズンには140万3712人のファンが試合を観戦した。これはアリーナの収容人数の84%に相当する。
・あるBBLクラブの幹部は、DYN(スポーツのストリーミングプラットフォーム)との新しい放送契約によって、チームは1シーズンあたり30万ユーロから35万5000ユーロ(4,800万円から5,700万円)を受け取っていると語った。
・2022-23シーズンは、ヨーロッパとその他の地域がパンデミックを乗り越え、ゲーム運営がコロナ禍以前のレベルに戻ったため、他国と比較できる最初のシーズンとなる。
スペイン
・スペインでACBの給与に関連する経済指標を見つけようとすると、次のようなコメントが返ってきた: 「我々はすべての情報を持っており、すべてのクラブの活動と予算を財務管理しているが、それは公開されていない。もちろん、各クラブの詳細情報をどこまで公開するかは、各クラブの自由であることは言うまでもない。
・リーグによれば、2022-23シーズンのレギュラーシーズンの平均観客動員数は、1試合あたり最大8,516人のところ6,059人で、収容率は71.1%だった。今季(2023-24)は2月11日現在、1試合平均8.371人中6,183人で、収容率は74%。
・リーグはまた、1590万ユーロのテレビ/放送収入を18のACBチームで分け合うと公約しており、順位によって配分が若干異なる。
・スペインの税金事情はドイツとは少し違う。通常の税率は45~54%で、マドリードが45%、バルセロナが52%、バレンシアが54%となっている。
一方、スペイン北部のバスク地方の税率はわずか20~22%で、主要クラブはバスコニアとビルバオだ。
・スペインの大きな違いは、非居住者、つまり滞在日数が182日以下の場合だ。その場合、課税は24パーセントで済む。選手が2シーズン目もスペインに滞在する場合は、高い税率が適用される。
しかし、24パーセントで1シーズンスペインに滞在し、その後1シーズンスペインを離れて戻ってくれば、再び24パーセントで課税される。
ACBランキング下位のクラブの中には、間違いなくこのルールを利用している。
スペイン北西部のルーゴにあるリオブレオガンは、その代表的なチームのひとつだ。このクラブは2021年にACBに昇格し、すぐにスペインのトップリーグでデビューする選手を多数獲得した: ドゥザナンムサ、ラシッドマハルバシッチ、タイラーカリノスキー、ニコラヤンコビッチだ。
2022-23シーズンにはその誰一人として戻ってこず(!)、代わりにユストゥスホラッツ、ネマニャネナンディッチ、トニナキッチ、ステファンモミロフ、イーサンハップ、ルカブラジコヴィッチといった新たなスペインデビュー選手を獲得した。
このルールの残り半分、つまり海外でのシーズン終了後に低い税率で課税されるという恩恵を受けている大物選手もいる。アンドラを離れサラゴサに戻ったディランエニスもその一人。ヤニスティンマは2017-18年にバスコニアでプレーしたのを最後に、オブラドイロに戻っている。オーガスタリマは2016年にレアルマドリーでプレーし、2018年にムルシアで復帰した。
・スペインにおけるもう一つの現象は肖像権で、クラブが肖像権会社にお金を払って選手の肖像権を管理している。企業はそのお金に対して何かをする義務はないが、その支払いには9%という低い税率が課税される。ある情報筋によると、クラブは選手の年俸の15パーセントまで肖像権を持つことができるという。
イタリア
・どのリーグのクラブも、スポンサーとチケットという2つのカテゴリーで資金を調達している。そして、イタリアのバスケットボールのリーダーたちは、新しいアリーナの建設に積極的ではない。イタリアでは1974年以来、会場の最低収容人数は3,500人となっている。
・イタリア人は2023-24シーズン、観戦により多く足を運んでいる。2022-23シーズンのセリエAの平均観客動員数は3,570人で、63%だった。2023-24年の前半戦では、この数字は3,968人(73%)に跳ね上がった。
・2022年7月、イタリアリーグは1,000万ユーロの3年間のテレビ契約を結んだ。
メランドリ法(スポーツイベントの放映権に関するイタリアの規定)によると、イタリアのクラブはテレビ収入の60%を均等に受け取る。さらに20パーセントは順位を考慮して分配され、最後の20パーセントはクラブのユーザーベース(ファン数に応じて15パーセント、クラブが所在する州の人口に応じて5パーセント)を考慮して分配される。
・リーグはリーグやクラブの収入額を公表していないが、イタリアで最も重要な経済紙『Il Sole 24 ore』は、2019-20年のクラブの総売上高は1億2000万ユーロ(194億円)だと報じている。
・イタリアに選手を抱えるエージェンシーによれば、10万ユーロ(1,600万円)の契約はクラブに24万ユーロ(3,880万円)の負担を強いる。16,000~20,000ユーロ(260~324万円)の下級契約では、クラブの負担は2倍にしかならない。
・イタリアのクラブもスペインのクラブと同様、肖像権会社を利用することで、肖像権料を会社の経費として申告し、低い税率で課税することで、サラリーコストを下げることができる。
ボローニャとヴェニスを除くすべてのクラブが肖像権の免除を利用しているようだ。そうでなければ、クラブが肖像権を利用することを禁止するものは何もない。ある代理店によれば、肖像権は選手年俸の15%から40%に使われているという。
・ドイツのBBLにおける育成基金と同様に、イタリアにもクラブが育成したイタリア人をプレーさせるためのインセンティブを与えるプログラムがある。クラブは、イタリア人であれ外国人であれ、セリエAに選手を登録するために15,000ユーロ(243万円)を支払い、それが毎シーズン行われる。あるクラブが12人の選手のうち、アカデミー出身の若手選手が2人しかいないとすると、15万ユーロ(10人分、2,430万円)ということになる。そしてそのお金は、14歳から20歳までの選手を育てたクラブに支払われる。
ギリシャ
・イタリアのクラブが”平等”であるのに対し、ギリシャはオリンピアコスとパナシナイコスアテネが明らかに優位に立っている。そして、この2クラブがギリシャバスケットリーグ(Greek Basket League)を牽引している。
・リーグのスポークスマンによると、12チームで構成されるGBLは今年、5000万ユーロ(81億円)の収益を上げる見込みだという。同スポークスマンによれば、今年の選手の年俸総額は3500万ユーロ(56億7,000万円)から4000万ユーロ(64億8,000万円)、純年俸(Net)は2500万ユーロ(40億5,000万円)から3000万ユーロ(48億6,000万円)と見積もられている。
・リーグ関係者によれば、パナシナイコスの予算が1,200万ユーロ(19億4,000万円)から2,000万ユーロ(32億4,000万円)に増えたため、この数字は昨シーズンから大きく跳ね上がった。
・オリンピアコスとパナシナイコスの重要性は、リーグのテレビ放映料の配分にも表れている。両クラブは総額750万ユーロ(12億1,000万円)の契約のうち150万ユーロ(2億4,000万円)を受け取り、残りの450万ユーロ(7億2,000万円)は順位に応じてリーグの他のクラブに分配される。
・ギリシャの税率は22%で、国の財政破綻後、4年以上前に変更された。
・ギリシャのクラブにとってのもうひとつの財源は、政府からのものだ。ギリシャにはギャンブル税があり、その徴収金から国がすべてのスポーツに資金を提供している。バスケットボールは500万ユーロ(8億1,000万円)を受け取り、12チームに均等に分配される。
フランス
・おそらく最も透明性の高いリーグはフランスで、DNCCGCP(Direction Nationale du Conseil et du Contrôle de Gestion des Clubs Professionnels:プロクラブのコンサルティングと経営管理に関する全国理事会)がリーグとクラブをサポートする助言グループとして機能し、リーグの経済規制と財務バランスを保証し、クラブの現在と将来の財務の健全性を評価するのに役立っている。
・DNCCGCPは年次報告書を発行しており、この報告書は国内の状況をかなり明確に示している。
・ベトクリックエリテ(エリート)(フランストップリーグ、以前のLNBプロA)の2022-23年度の営業総利益は1億1150万ユーロ(およそ180億円)で、2021-22年度の9360万ユーロ(151億円)から19パーセント増加した。そのうちの約45パーセント(5020万ユーロ)がスポンサーによるもので、2021-22年の48パーセント(4450万ユーロ)から減少した。そして、クラブの収益におけるスポンサリングの使い方はかなり幅があった。例えば、ナンテール92は65パーセントをスポンサーから得ているが、メトロポリタン92は11パーセントに過ぎない。
・リーグは2022-23年に1800万ユーロ(29億円)の補助金を受け取ったが、これは2021-22年の2050万ユーロ(33億円)より実に12パーセント低かった。
・一方、選手とコーチの給与総額は、2021-22シーズンの3950万ユーロ(64億円)から昨シーズンは4470万ユーロ(72億円)へと13パーセント増加した。ベトクリックエリテの総営業費用は1億4,020万ユーロ(227億円)で、2021-22シーズンの1億1,810万ユーロ(191億円)から19パーセント増加した。
・フランスではファイナンシャルフェアプレー規制への取り組みが議論されていたが、その代わりに贅沢税が導入された。選手とスタッフの給与の合計が予算の40%を超えた場合、クラブは税金を支払わなければならない。
・モナコは2023年にフランスリーグで初の栄冠に輝き、そのツケが回ってきた。2022-23シーズンの営業収入は790万ユーロ(12億8,000万円)に倍増したにもかかわらず、公国のクラブは2370万ユーロ(38億円)の営業費用を計上した。これは、リーグの赤字の55パーセントを1クラブが占めていることに等しい。
・アズヴェルとパリバスケットボールにモナコを加えると、このトリオはリーグ総損失2870万ユーロのうち2400万ユーロ近くを占める。
・フランスでの2022-23シーズンについて、観察すべき最も重要な注意点の1つは、ウェンバンヤマ効果としか言いようのないものである。ビクターウェンバンヤマは、2023年のNBAドラフトで将来1位指名を受ける選手としてメトロポリタンズ92でプレーし、リーグで話題となった。
・メトロポリタンズは、ウェンバンヤマにより多くの注目を集めるため、シーズン序盤のリーグ戦を延期してラスベガスへ遠征し、Gリーグのイグナイト(2020年創設、2024年に消滅)と2試合を戦った。
・この魅力的なティーンエイジャーは世界中のメディアに取り上げられ、誰もが将来のスーパースターを一目見ようとした。
・メトロポリタンズのチケット売上は、2021-22シーズンの75万枚から昨シーズンは320万枚へと305パーセントも跳ね上がった。そのおかげでクラブの営業利益は460万ユーロ(7億4,000万円)から昨シーズンは990万ユーロ(16億円)へと114パーセント増加した。
・ユーロリーグのモナコやアズヴェル、ユーロカップ準々決勝進出クラブのパリとは異なり、メトロポリタンズは国内でのプレーのみで、ヨーロッパのカップ戦には出場していない。
・メトロポリタンズの総経費は、2021-22年の750万ユーロから1080万ユーロへと43パーセント増加した。そしてスポーツ総給与は、昨シーズンの280万ユーロから310万ユーロへとわずかに跳ね上がった。
・メトロポリタンズの収入項目のひとつに「その他の製品」という項目があり、2021-22シーズンはわずか18万ユーロ(2,900万円)だったが、昨シーズンは270万ユーロ(4億3,000万円)だった。DNCCGCPの報告書によれば、このお金はウェンバンヤマと、昨シーズンもメトロポリタンズでプレーした彼の同僚で1巡目指名のビラルクリバリの両選手のNBAドラフト指名の一部としてクラブが受け取った報酬だという。
・ウェンバンヤマ効果のおかげで、ベトクリックエリートは約120万人の観客を動員し、新記録を樹立した。レギュラーシーズン終了時の平均観客動員数は3,910人で、SLUCナンシーは1試合あたり5,829人を動員し、リーグ平均観客動員数の新記録を樹立した。また、87%の収容率は、これまでのリーグ最高記録であった2017-18シーズンの83%を上回った。
起こりうる変化
・ドイツのバスケットボールの一番の問題は、VBG(傷害保険機関)のようだ。クラブがより多くの収入を得るために、この組織への年間拠出金は増え続けるだろう。あるBBLのチーム関係者は、VBGの請求額が今期は50万ユーロ(8,100万円)の大台に乗ると予想している。
・ある欧州のエージェンシーの責任者は、ドイツの余分なコストはチームが競争するチャンスを「締め付け」、ハイレベルの人材を確保する上で「障害となる」と述べている。
・ドイツの政治家は、労働の専門家や産業界のアドバイザーの声に耳を傾け、研究者、開発者、より優れたバスケットボール選手など、あらゆる分野でより質の高い従業員を集めやすくする努力をすることもできるだろう。
これを可能にする方法としては、スペインと同様、入国初年度の税率を引き下げることが考えられる。
また、デンマークには、最長7年間、研究者や特定の従業員給付金に対する特別な税制がある。通常の税率は最高52%だが、32.8%で課税される。
・あるクラブ関係者が思いついたもう1つの可能性は、リーグがクラブに対し、将来の投資のために指定されたさまざまな分野の資金を貯蓄基金に納めることを義務づけることだった。たとえば、ビデオ放映権のテレビ/広告契約から得た30万ユーロ(4,800万円)のうち20万ユーロ(3,200万円)を預託口座に入れる。口座に十分な資金があれば、クラブは例えば、ウルムにあるオレンジキャンパスのような24時間年中無休の練習施設を建設することができる。
そうすれば、ドイツのクラブはヨーロッパで最高の練習施設を得て、選手を惹きつける競争力を得ることができる。
・また、バイエルンミュンヘンにならって、ドイツのトップサッカークラブがバスケットボールプログラムを立ち上げることも考えられる。2011年にバイエルンがブンデスリーガ(BBL)に昇格したようにだ。
・ヨーロッパのバスケットボールにファイナンシャルフェアプレールールが導入され、遵守されるようになれば、ドイツのクラブも恩恵を受けるだろう。
将来を見据えて-BBL
・遡ること2011年5月、BBLは「ビジョン:2020年にヨーロッパ最高の国内リーグとなる」を打ち出した。ヤンポンマーCEOが率いるこのリーグは、観客動員数、テレビ視聴率、収益の向上、各クラブのスポーツ成績の向上を長期的な目標として掲げた。
・クラブには最低100万ユーロ(1億6,000万円)の予算と、最低3,000人収容のアリーナが義務づけられた。リーグはまた、U16 JBBLリーグとU19 NBBLリーグに、BBL全チームの規約となるユースタレント育成ガイドラインを制定した。
・2010-11年のBBLは、10年連続で観客動員数の新記録を達成し、2010-11年に初めて4,000人の大台を超えたばかりだった。そして、クラブは総額6,100万ユーロ(98億8,000万円)の予算で2011-12シーズンを迎えた。
・2012年のBBLは、12人制の試合登録選手の中にドイツパスポートを持つ選手を6人入れなければならないという6+6ルールを制定した。2011-12シーズン終了時、ドイツ人の出場時間は22.39%だった。これが2022-23シーズンには33.3パーセントに跳ね上がり、そのトップはブラウンシュバイクの63.3パーセントである。最も低かったのはロストックで19.7パーセント、11クラブが昨シーズンの出場時間の35パーセント以上をドイツ人で占めていた。
・ビジョン2020は失敗だったという見方もあるが、リーグが望んでいたことの多くは達成された。
・2015年、ステファンホルツがポンマーの後任としてリーグのCEOに就任した: 「我々はドイツの顔が必要だ。アリーナを満員にし、主要テレビ局にリーチする必要がある」。
・2022年11月、リーグは将来のための次の戦略を打ち出し、「トリプルダブル」と名付けた。
・2032-33シーズンの開幕までに、最低予算は300万ユーロ(4億8,000万円)から600万ユーロ(9億7,000万円)に引き上げられる。最低予算は2年ごとに50万ユーロずつ増える。さらに、アリーナの最低収容人数は、2032-33シーズンまでに3,000人から最低4,500人に跳ね上がる。しかし、多くの都市ではもっと高い最低収容人数になるだろう。その場合、次の人口10万人を基準に1%の最低収容人数が必要となる。人口65万人の都市のクラブは、少なくとも7,000席のアリーナを持たなければならない。
※Bプレミアにおいては、一律5,000人以上
・リーグはまた、テレビ、従来のデジタル(ウェブサイトやアプリ)、ソーシャルメディアの面でリーグのリーチを倍増させ、国際大会でのチームの成功を増やしたいと考えている。
次のニューフェイスが必要
・ドイツのリーグとクラブは、ドイツ大陸で次のステップに進むために全力を尽くしている。しかし、ドイツの財政基盤はそれを許していない。
・もし何も変わらなければ、ドイツのクラブは大陸(ヨーロッパ)で真にエリートである一面、つまり新しい才能の発掘を続ける必要がある。
・欧州のトップエージェンシーの重鎮によれば、ドイツのクラブは欧州で最高のスカウトを擁しているという。そして、欧州の舞台で戦うためのクオリティーを見つけるためには、優れたスカウト陣が必要なのだ。
今シーズンBBLにデビューした選手たちを見てみよう: ウルム出身のトレヴィオンウィリアムズ(パデュー大学出身)、ケムニッツのジェフギャレットとウェスリーファンベック、ハンブルクのアルジャミドゥラムとVJキング、ロストックのシェベスグッドウィン、ハイデルベルクのイライジャチャイルズ、オルデンブルクのチョンディーブラウン(!)、テュービンゲンのジヴヴァンジャクソン。
また、ヴェヒタのトミークゼ、ヴュルツブルクのオーティスリヴィングストンとザックセルジャース、ロストックのデリックオルストンなど、ドイツで2シーズン目を迎え、優秀な成績を収めているスター選手もいる。
・2023-24シーズンに素晴らしい活躍を見せたこれらの選手たちのほとんどが、その功績を評価されて2024-25シーズンにはより高額な契約を求めてドイツを離れることになるとしたら・・・
こうした選手たちが次々と国外に移籍していく中で、クラブはファンに新たなスターを提供し、彼らが再び「より良い条件」を求めて旅立つまでの間、愛される存在として育てる役割を担うことになるだろう。
どうなる?ドイツBBL、どうなる?Bリーグ
切なくなります。。。
上に出てきた中には、ティーマン以外でもBリーグにやって来た選手がいます。
成長続けるBリーグ
上に載せた、ドイツBBLクラブの予算分布をBリーグB1と比較してみましょう。
予算 | ドイツBBL 2022-23(計18クラブ) | BリーグB1 2023-24(計24クラブ) |
16億2,000万円以上 | 2クラブ | 14クラブ(!) 宇都宮、群馬、千葉J、A東京、渋谷、川崎、横浜、 三遠、三河、名古屋D、大阪、島根、広島、琉球 |
8億9,000万円~16億 | 5クラブ | 9クラブ 北海道、仙台、秋田、茨城、信州、 FE名古屋、京都、佐賀、長崎 |
6億4,800万円~8億9,000万円 | 7クラブ | 1クラブ 富山 |
6億4,800万円以下 | 4クラブ | なし |
※ただし1季すれることにより、日本には2023ワールドカップ効果含まれ、ドイツには優勝効果(!)が含まれず。2023-24実績、探しておきます。> 参考:アルバベルリンで24億円。こちらによると、バイエルンミュンヘンが53億円!それでも、Bリーグ勢強い。
以前に投稿した際の、2019-20シーズン実績とも比べてみます。
クラブ | 2019-20シーズン 単位:千円 | 2023-24シーズン 単位:千円 |
A東京 | 1,558,441 | 3,124,732 |
千葉J | 1,543,604 | 2,687,064 |
大阪 | 1,538,250 | 1,683,191 |
三河 | 1,529,386 | 2,071,984 |
宇都宮 | 1,357,665 | 2,338,892 |
川崎 | 1,327,484 | 2,262,836 |
琉球 | 1,034,649 | 3,021,825 |
名古屋D | 985,653 | 1,954,222 |
SR渋谷 | 864,083 | 2,020,848 |
横浜 | 802,485 | 1,777,693 |
北海道 | 791,449 | 1,437,223 |
秋田 | 779,731 | 1,496,867 |
三遠 | 756,650 | 1,664,529 |
新潟 | 633,267 | - |
滋賀 | 611,309 | - |
富山 | 594,946 | 815,840 |
京都 | 593,955 | 1,406,081 |
島根 | 459,112 | 1,788,115 |
すさまじいです!!倍増、琉球は3倍増!!
ユーロリーグクラブ分も載せておきます。
クラブ | 予算(単位:千円) |
レアルマドリッド | 7,292,034 |
パナシナイコス | 5,995,672 |
オリンピアコス | 5,995,672 |
アナドルエフェス | 5,590,559 |
フェネルバフチェ | 5,428,514 |
バルセロナ | 5,185,446 |
EA7ミラノ | 6,319,762 |
レッドスターベオグラード (クルブツルヴェナズヴェズダ) | 3,564,994 |
ASモナコ | 4,764,128 |
パルティザン | 3,727,039 |
ヴィルタスボローニャ | 4,051,130 |
バイエルンミュンヘン | 5,347,491 |
バスコニア | 2,268,632 |
ジャルギリス | 2,868,200 |
マッカビテルアビブ | 3,078,858 |
アスヴェル | 2,625,132 |
パリ | 3,062,654 |
アルバベルリン | 2,365,859 |
レアルなど上位”巨人”クラブは別にしても、30億を超えているA東京、そして琉球(!)をはじめ、宇都宮、千葉Jあたりはもはやユーロリーグと同格(!!)(20億超えの渋谷、川崎、三河、その他も間もなく?)
ドイツに限らず、Bリーグは引き続き世界中から人を集めるでしょうね。
しかしですよ。
やはりお金ではなく、自国選手の競技レベルでこそ存在感を示してほしい!
今年2月のアジアカップ予選、vs 中国@深圳。
「海外組」など欠き、ベストではなかったとはいえ、Bリーグ代表ともいえる日本対CBA代表と言えた中国代表。
あまりにもひどかった。> 42点差大敗
二度とあんなゲームをしてはいけない。
そして、メディアも「国際経験が少ない」などと、数えきれないほど聞いたことのある言い訳を書いてはいけない。
マネーリーグなんて呼ばれるリーグは嫌だ。
そんなリーグはいずれそのマネーも失う。
※ここに記した円換算は投稿時点(2025年5月)のものです。