世界中の子供たちが憧れるNBA選手。
若い選手が目指す、究極の目標はやはりNBA選手でしょう。
では、どうすればそのNBA選手になれるのか。どのような選手がNBAにたどり着けるのか。
今回は、アメリカの高校生選手格付け方法を解説した記事をもとに、”NBA選手になるための資質”を探ってみます。
いまや老舗ともいえるほど、昔からこのランキング、格付けを行っていたESPNを筆頭に、数多くの高校バスケットボール選手ランキングが存在するようになりました。
On3-アメリカ高校バスケットボール選手ランキング

格付けが大好きなアメリカには、いくつかの高校バスケットボール選手ランキングが存在します。
それぞれのランキング、比較表をこちらに。
| ランキング | ESPN 100 | 247Sports Top150 / Composite | On3 150 |
| 特徴 | 最も一般層に認知されているランキング。テレビ・記事・SNSでの影響力が大きく、選手の知名度に直結。 | 他メディア(ESPNやRivalsなど)の評価を合算した「Composite」は、大学コーチ・ファンにとって事実上の「コンセンサス」。精度が高いとされる。 | 2021年創設の新興勢力。評価基準を「NBAドラフト視点」に寄せている点が他と差別化され、急速に影響力を拡大中。 |
| 2025年 1位 | AJディバンツァ (BYU進学) | ダーリンピーターソン (カンザス進学) | AJディバンツァ |
| 2位 | ダーリンピーターソン | AJディバンツァ | ネイトエイメント (テネシー進学) |
| 3位 | キャメロンブーザー (デューク進学) | キャメロンブーザー | ダーリンピーターソン |
| 4位 | ネイトエイメント | ネイトエイメント | キャメロンブーザー |
| 5位 | ケイレブウィルソン (ノースカロライナ進学) | ダイウスエイカフ (アーカンソー進学) | ケイレブウィルソン |
ここに名前があがった選手は間違いなくNBA候補ですが、各ランキングが微妙に違うのがわかります。
今回は、評価基準を「NBAドラフト視点」に寄せている、On3にフォーカスします。
On3はアメリカで急成長しているリクルーティングメディアで、「On3 150」と呼ばれる高校生ランキングを毎年発表しています。対象は主に高校生で、評価の最終基準は「どの程度NBAドラフトで指名される可能性があるか」。※この投稿一番下に、2025年大学進学選手のランキングがあります。
つまり、「高校で一番活躍した選手」や「大学で即戦力になりそうな選手」を選ぶわけではなく、あくまで プロ入りを前提とした長期的なポテンシャル を見ています。
評価は高校1年(一般的に、日本では中学3年生に相当)終了時から始まり、7〜8年生(中学生)ごろからの成長曲線を追跡します。選手はフィルム分析、現地観戦、コーチや周囲の関係者へのヒアリングを通じてチェックされ、1つの学年サイクルの間に10回以上アップデートされるのが特徴です。透明性を重視しており、ランキングに隠された意図や不透明さを排除する姿勢を打ち出しています。
では、実際にスカウトが重視する「5つのスキル」とは何でしょうか?
On3ランキング:トップバスケットボール選手のスカウティングにおいて重視する、5つのスキル
1. 判断力と状況把握(Processing & Dissecting)
過去のNBAでは、アレンアイバーソンやトレイシーマグレディのように、1人のスターがボールを長時間保持し、個人技で得点を重ねるスタイルが主流でした。しかし現代バスケは大きく変化しています。
たとえば昨季のNBA王者、ボストンセルティックスや、今季優勝のオクラホマシティサンダーは、ジェイソンテイタムやシェイギルジャス=アレキサンダーといったスーパースターを中心にしつつも、周囲の選手全員が「自らプレイを作れる」能力を備えているのが特徴です。
スター選手を取り巻く、ジュルーホリデー、デリックホワイト、クリスタプスポルジンギス、ジェイレンウィリアムズ、チェットホルムグレンなどの選手たちも、皆「プレーを作る」ことができる選手たちです。
実際、NBAのロスターの95%以上は「スター選手を補完する選手たち」で構成されています。
つまり、スカウトが求めるのは「一連の必殺ムーブ」ではなく、状況に応じて最適解を導き出す意思決定力。ボールを持った瞬間に「ドライブするのか、シュートを打つのか、パスを出すのか」を判断できる力が、現代バスケットボールでは最重要視されます。
2. サイズ・長さ・運動能力(Positional size, length, athleticism)
身体的な要素は依然として欠かせません。
2024-25 シーズンの NBA 最高給与選手トップ 15 の中で、身長 6 フィート 6 インチ(約 198 cm)未満の選手は、ダミアンリラード(6 フィート 2 インチ、約 188 cm)、ステフカリー(6 フィート 2 インチ、約 188 cm)、ブラッドリービール(6 フィート 4 インチ、約 193 cm)の 3 人だけです。
近年のNBAでは6フィート2インチ(約188cm)未満の選手は25人程度しかおらず、6フィート未満となると河村勇輝ただ1人です。
それだけ、リーグが「長身・ウイングスパン重視」にシフトしていることがわかります。
さらに現代は「ポジションレス」が主流となり、ガード・フォワード・センターという区分よりも「ボールハンドラー・ウイング・ビッグ」の3分類で考えられています。したがって、自分のスキルを保ったまま、サイズを活かして複数ポジションをこなせるかが評価基準になります。
ディフェンス面でも重要です。現代のオフェンスは徹底してコートを広げるため、ディフェンダーは広範囲を素早くカバーしなければなりません。リーチや脚力でカバーできるかどうかは大きな差となります。
ポジションごとのサイズ、身長、そして十分な運動能力は、選手をスカウトする際にはすぐに確認できます。
3. シューティング(Shooting)
バスケットボールにおける最大のキーワードは「スペーシング」。その基盤となるのがシュート力(シューティング)です。
ディフェンスに「この選手は放置できない」と思わせるだけでオフェンスは優位になります。特にキャッチ&シュートで確実に決められるかどうかは、現代バスケットボールでの評価を大きく左右します。
重要なのは「ドリブルからの難しいショット」ではなく、正しいポジショニングで待ち、パスを受けたら迷わず打てるか。これができるだけで、チーム全体の攻撃オプションが一気に広がります。
※日本代表でも富永啓生の存在感はその典型で、彼がコートに立つだけで相手ディフェンスの配置は大きく変わります。
4. フィジカルとハードワーク(Motor & Physicality)
「努力」「タフさ」は永遠に評価されるポイントです。
高校生の段階では体格がまだ成熟していないため「細い=弱い」と誤解されがちですが、実際に重要なのは気持ちの強さとハードワークを続けられるか。ルードート(OKC)のように、オフェンス面に課題があってもディフェンスで徹底的に相手を止める姿勢を見せることで、NBAのロスターに残る選手もいます。
ドートのオフェンス能力に関する疑問がドラフト指名から外れる原因となりましたが、フィジカルな強さと粘り強さがロースター入りを可能にしました。現在、その機会を得た彼はオフェンスを磨くと同時に、ディフェンスでもフィジカルな存在感を維持しています。ドートのルーキーシーズンでは3ポイントショット成功率が29.7%でしたが、今シーズンは1試合平均5.8本の試投で41.2%を記録しています。6フィート4インチ、220ポンドの体格で、NBAのペリメーターで最もハイモーターでフィジカルな選手の一人です。
95%以上のNBA選手は「スーパースターの脇を固める役割」です。そこで生き残るためには、50-50ボール(ルーズボール)に飛び込み、リバウンドをもぎ取り、相手の強みを潰せる選手が求められます。
NBAでプレーされる多くの試合が合計250点を超える中、リーグでは依然としてディフェンスが重視されています。
5. スペースでの優位性(Creating an advantage in their space)
最後に重要なのが「自分のスペースで勝てる力」です。
現代バスケットボールでは、ガードなら1対1でディフェンスを崩し、ビッグマンなら守備でスライドしてリムを守れるかが評価されます。
要するに、「自分のエリアで優位を作り出せるかどうか」。これはポジションレス化が進んだNBAで特に重視されています。
チームは常に、相手チームよりも多くの得点を挙げるための最良の方法を模索しています。多くの人がこの主張が当然のことだと指摘するかもしれませんが、少なくとも私にとっては、この点を明確に指摘しないと物事が理解しにくいのです。
先ほども述べたように、現代のバスケットボールの出発点は「スペースの活用」です。そのスペースが確立されると、チームは自分たちが好む優位性を最大限に活用しようと努めます。ハーフコート内のポジションに関わらず、常に1対1の対決で優位に立てる選手は、非常に価値のある存在です。
まとめ:5つのスキルの掛け算が未来を決める(Scouting today’s game)
要約すると、現在のバスケットボールの最高レベルでは、多才な選手を求めています。
複数のポジションをスムーズにこなせ、優位性を発揮できる選手です。そして、その通り、そのような選手は稀有な存在です。ランキングには150人の選手が掲載されますが、現実的には、そのうち15人から20人程度がNBAのコートに立つでしょう。
高校レベルでの選手スカウトは、14歳ごろから始まり、その選手が18歳または19歳になった時点でサイクルごとの最終ランキングが発表されます。この過程で、注目すべき指標が存在します。確かに、18歳または19歳以降に個人として大きな成長が見られる場合もありますが、これらの指標は、選手が成熟するにつれて効果的に発揮されるスキルです。
On3がNBAレベルを詳細に分析し、選手をランキングする際、バスケットボールの最高レベルの現状を把握することは重要です。将来を見据えると、これらの5つの特性をすべて備えた選手は極めて稀です。しかし、若い選手が複数の特性の片鱗を見せることは、その選手の長期的な展望を示す上で大きな意味を持ちます。
まとめ:未来を決める5つの要素
On3が重視する5つのスキルは以下の通りです。
- 判断力と状況把握
- サイズ・長さ・運動能力
- シュート(シューティング)力
- フィジカルとハードワーク
- スペースでの優位性
元記事:Behind the On3 Rankings: 5 skills we prioritize when scouting top basketball prospects