NCAAカレッジバスケットボールオフシーズン恒例
残念ながらNCAAトーナメントは中止になってしまいましたが(いまだに信じられません)、、、
毎年オフシーズンにはコーチの交代が活発に行われます。
NBAと同じか、それ以上にこのコーチ人事に注目が集まるのは、NCAAバスケットボールでは、選手ではなくコーチによってチームの成績が決まると言われているからです。
(近年よく取りざたされているように)NCAAではどれほどの才能を持っていても選手は1円も稼げませんが、学校は何億というお金を払ってコーチを連れてこようとします。その額は、NBAのコーチが受け取っている報酬に劣りません。
実際、その能力は高く評価されており、バスケットボールの殿堂入りをしているコーチの多くがカレッジのヘッドコーチです。
→リストを参照下さい。
サラリー(年棒)の比較
*引用:NCAA NBA NBAは以前の記事ですが、大きく相場は変わっていません。
ランク | NCAA | サラリー | NBA | サラリー |
1 | マイクシャシェフスキ(デューク) | 8.98億円 | グレッグポポビッチ(サンアントニオ) | 11億円 |
2 | ジョンカリパリ(ケンタッキー) | 8.04億円 | トムシボドー(当時ミネソタ) | 10億円 |
3 | ミッククロニン(UCLA) | 5.5億円 | ドックリバース(LAクリッパーズ) | 10億円 |
4 | リックバーンズ(テネシー) | 4.7億円 | リックカーライル(ダラス) | 7億円 |
5 | ビルセルフ(カンザス) | 4.48億円 | スコットブルックス(ワシントン) | 7億円 |
6 | クリスビアード(テキサステック) | 4.2億円 | スタンバンガンディ(デトロイト) | 7億円 |
7 | ロイウィリアムズ(ノースカロライナ) | 4.04億円 | ビリードノバン(オクラホマシティ) | 6億円 |
8 | クリスマック(ルイビル) | 4億円 | ドウェインケイシー(当時トロント) | 6億円 |
9 | トムイゾー(ミシガンステイト) | 3.957億円 | ジェイソンキッド(当時ミルウォーキー) | 6億円 |
10 | ボブハギンズ(ウェストバージニア) | 3.955億円 | フレッドホイバーグ(当時シカゴ) | 5億円 |
世界最高峰の、NBAコーチ以上のサラリーを受け取っているNCAAコーチが存在することがわかります。
日本人スター、富永啓生選手が2021年に進学するハイメジャー校、ネブラスカ大学に2019年から移っているフレッドホイバーグ。
彼の契約は7年で、1年目のベースは2.5億円からスタート。徐々に上昇し、7年目は3.5億円。ビッグテンカンファレンス制覇、ファイナルフォー進出などでインセンティブも受け取れます。ハイメジャーとはいえバスケットボール強豪校ではないネブラスカでこの額。詳しい記載がありますので、ぜひ参照して下さい。
2020年NCAAカレッジバスケットボールコーチの主な動向
こういうわけですから、NCAAのヘッドコーチ人事には多くの注目が集まります。
NCAAトーナメントなど、ポストシーズンイベントが中止されたこともあって、今季は”最終成績”がはっきりせず、例年に比べれば異動が少ないように感じます。
→一覧 *このサイトはすごく便利ですよ。
アイオナ:リックピティーノ
最大の大物。
超強豪ルイビルでの不祥事以降、ギリシャのパナシナイコスに渡っていたピティーノがカムバック。ハイメジャーではありませんが、注目(彼はアメリカでは東部およびケンタッキー以外ではコーチしないと言われています。ナイキスクールも×(笑))。
限られた才能のチームを勝たせる。
ピティーノはこの芸当が得意です。世界と戦っていこうとする”日本”にとっても注目に値すると思います。
アイオナはニューヨークシティ北東郊外ニューロシェルにあるカトリック校。
”カレッジ”という名が示す通り小規模校で、所属カンファレンスはMAAC。*Bリーグ・宇都宮所属の日本代表ライアンロシターの母校シエナもメンバーです。決して弱小リーグではありません。
ホーム、ハインズセンターは収容3000人以下ですが、、、必ず強くなります。観に行きたいです(笑)。
着任にあたり、ピティーノがライバル校を震え上がらせる発言をしています↓
ジョージアサザン:ブライアンバーグ
弓波英人選手が所属するジョージアサザン。
マークバイントンがバージニア州のジェイムスマディソン(JMU)へ。高齢のお父さんの傍にいられるよう、故郷へ戻るとのこと。
代わって、ブライアンバーグ。2019年NCAAトーナメントで、八村塁率いるゴンザガを破ってファイナルフォーに進んだテキサステックのアシスタントがヘッドコーチデビュー。
上の表のとおり、一躍トップ10コーチに躍り出たクリスビアードを支えた手腕に注目です。
タールトンステイト(テキサス):ビリーギリスピー
こちらは富永啓生選手が現在所属するジュニアカレッジ、レンジャーから異動。
タールトンステイトは今シーズンまで榎本新作選手が属したイースタンニューメキシコ大学ともどもローンスターカンファレンスで戦ったディビジョン2プログラムでしたが、2020-2021シーズンよりディビジョン1へ。
ケンタッキーなどでコーチ実績のあるビリーギリスピーを新ヘッドコーチに指名しました。
色々あったギリスピー。復活はなるでしょうか。
レンジャーの南東に位置するタールトンは、これもかつてギリスピーが指揮したハイメジャー、テキサスA&Mの分校にあたるようです。
ノースカロライナ大学ウィルミントン校(UNCW)
これも日本人選手絡み。テーブス海選手が所属したUNCW。
昨季、1年生にしてジャモラントに次ぐNCAA2位の平均7.7アシストを記録したテーブス選手でしたが、今季は13ゲームに出場も早々にチームを離脱。Bリーグ・宇都宮に加入したのはご存じのとおりです。
テーブス選手をリクルートしたCBマグラスも19ゲームを指揮した後に解任。
期待されていましたが、ヘッドコーチとしての成績は26勝58敗と散々。見切りをつけられました。
後任はタカヨシドル。ノースカロライナステイトのアシスタントで、マグラスの前のUNCWコーチ、ケビンキーツを長年にわたって支えました。ヘッドコーチとして戻ってくる形になります。
イリノイ大学シカゴ校(UIC):ルークヤクリッチ
ピティーノに次ぐ大物と言っていいかもしれません。
コーチ界隈で知将として有名だったヤクリッチもついにヘッドコーチデビュー。地元イリノイに戻ります。
注目です。
NCAAにおける日本人バスケットボールコーチ
ケンタッキーのJBホールの下で学んだ故小浜元孝氏はじめ、多くの日本人がNCAAプログラムへコーチ留学されてきました。学生マネージャー(競争が激しい!)というポジションも含めると、その数は相当なものです。
その”スタイル”が近年さらに「進化」しつつあります。
かつてはコネクションを利用しての留学が主であり、どうしても”オブザーバー”、良くも悪くも”見学者”としてのスタイルは否定できませんでした。
が、最近はコネクションのみならず、自らの覚悟と行動力をもってアメリカ人たちと競争、ポジションを勝ち取る例が少なくなくなってきました。
彼らはもはや”お客さん”ではなく、完全に1人のコーチングスタッフ。日本人には非常に難しいとされる、リクルーティングの任を持つ方さえ出現しつつあります。
そんなバイタリティあふれる彼らの姿を見ると本当に羨ましく、同時に同情もします(笑)。でも何よりもリスペクト。
これまで以上に、日本のバスケットボールにもその知識と経験を還元してくれるはずです。
そしていつか日本でも、NBAやNCAA並みに、バスケットボールコーチが憧れの職業になれば素晴らしいと思います。
最後に、弓波選手の師マークバイントンがジョージアサザンを離れる際に綴ったツイートを。
7年もの間、才能あふれる選手とともにサンベルトカンファレンス有数のバスケットボールプログラムを構築したけれども、「卒業率100%」ということを、より誇りに思う。
インターネットの普及もあって、バスケットボールに関する英知は溢れ、物凄い知識と才能を持ったコーチは日本人にも多く存在するように思います。が、コーチする選手の誰もがプロになれるわけではありません。
バスケットボールは人生の一部に過ぎないということは、心に留めておいてほしいと思います。
自戒も込めて。
今回も最後まで読んで下さり、ありがとうございました。