NCAAリクルート関連で激震
「激震」ではありますが、その内容については「今更」という反応でした。
FBIが動いたのは収賄。有望高校生選手を指定する大学へ送り込む。この大学が契約しているスポーツメーカーが絡んでいたり、AAUやこの選手がNBAに進んだ場合のエージェントが絡んでいたり。。。
真新しくもない、珍しくもない話です。
フィクションとは言え、20年前にスパイクリーが映画を作っています(デンゼルワシントンやレイアレンが登場した、ご存知"He Got Game."です。シャックやペニーの"BLUE CHIPS"もこの類ですね。)。リーはかなり誇張して描いていますが、的外れな映画では決してありません。
明るみに出ないだけで、日常的に行われていること。反応はこんなところでした。
ではなぜ「激震」なのか。槍玉に上がったのが”大物”であったからです。
ルイビル大学ヘッドコーチのリックピティーノが辞任へ
日本で自己啓発書が訳されるほどの大物。
※この本は悪い内容ではなかったのですが・・・
かつてはニックスとセルティックスのヘッドコーチでもあったことから、その知名度は日本でも有数のコーチでした。
こちらの投稿でも書いた通り、今季のルイビル大学はトップ5にランクされるほど期待されたチームでしたが、その要因と言える有望高校生の獲得。ブライアンボウエンのリクルートに際し、多くのお金が動いたようです。
詳細は省きますが、ルイビル大学と、同校と契約しているアディダスが画策してボウエンの入学にマネーをつぎこんだようで・・・
よくある話です、本当に。
ルイビルは大学のアスレティックディレクター(AD、体育局局長)の娘がアディダスのブランドマネージャーであったり、契約金の8、9割がピティーノに流れていたりと、あまりにも「わかりやすい」話が露呈。
NCAA優勝3回。ケンタッキー大学の宿命のライバルであり、全米有数の強豪校が大きなペナルティを科せられることになります。
おそらくNCAAトーナメント含めたポストシーズン出場停止。メディア露出も減ることから、多くの有望高校生がルイビルへの入学興味を失くすでしょう。
オフィシャルサイトには既にピティーノとボウエンの名前はありません。
ボウエンは海外に行くのでは?との憶測が流れています。
アディダスが”アディオス”になっています。。。↓
*ルイビル大学の学生新聞より
それにしてもピティーノは残念。
NBA、NCAAでスリーポイントを武器にしたアップテンポなスタイルで一世を風靡しました。
プロビデンスカレッジでビリードノバンらを育てて見事にファイナルフォーに進出した1987年、そして史上最高のバスケットボールゲームとも評される、1992年のフィラデルフィア・スペクトラムでのNCAAトーナメント地区決勝(vsデューク)。どちらも強烈に印象に残っています。
彼のスタイルは、フロリダ大学でNCAA連覇という偉業を成し遂げたビリードノバン、そして現テキサス大学HCのシャカスマートがVCUで確立した"HAVOC"などに受け継がれています。
伝説のケンタッキーvsデューク。
ゲーム後にお互いを讃え合うアントニオラングとジメルマルティネスは、後にともに日本でプレイ↓
ピティーノがリクルート問題で追われるのは皮肉。
タレントが揃わなくとも勝つチームに育て上げる腕は超一流であったからです。
こんな投稿さえしましたし、個人的にはピティーノが日本バスケットボールを率いたらあっという間に強くなるのではないかとも思っています。
一方で「自己中心的」「すぐ感情的になる」という評価も適確。コーチよりも選手の権限が大きくなるNBAでは成功できなかったこともまた事実です。
他の”大物”は、元NBA選手で1985年神戸ユニバーシアードで来日もしたオーバーン大学のチャックパーソン。
そしてアリゾナ大学で敏腕リクルーターぶりを大いに発揮していたエマニュエル”ブック”リチャードソン。
彼らは有罪になれば何十年もの服役が予想されており、、、つらくなります。
NCAAにおけるリクルート、そして文武両道とは
ネガティブな投稿は書いていて嫌になりますが、今回のFBIによる調査は終わっていないようです。少なくとももう一校、それもルイビルと同等かそれ以上の強豪校が槍玉に上がるという噂もあります。
NCAAにおける選手リクルートについては、NBAドラフトへのONE&DONEと言ったアーリーエントリーも含め、これまでも多くの議論がされてきました。が、金銭が飛び交う生臭い話は全くなくなりません。。。
今回の騒動の中、強豪・ウェイクフォレスト大学出身のLDウィリアムスがこんなツイートをしていました。
「コーチPはリクルートに際し、単位が取れる(勉強させる)ことだけしか約束しなかった。」
*金銭はもちろん、スターターを保証するなど、甘い勧誘の言葉は使わなかったという意味。
コーチPとはスキッププロッサー。クリスポールらをリクルートしたことも有名で、人格者として知られましたが、2007年に56歳の若さで死亡しました。
結局のところ、選手のリクルートに際してどのようなアプローチを行うかはコーチ、その人によって異なります。そしてどのアプローチに共鳴するか、これもその選手と家族によって異なります。
文武両道という言葉もよく聞きます。が、これも正解なのかどうか、誰にもわかりません。
才能あふれる若い時にまず稼ぎ、高等教育は”必要なら”引退後に自費で学校に通って受ければよい。こういった意見さえあります。
日本版NCAAという計画も進んでいます。これはどちらかと言えば、これまで機会損失していたビジネスの話。成功してお金が集まれば、NCAAのように「問題」が大きくなる可能性も十分あります。またリクルートに関しては、規模こそ違えど、アメリカと似たようなケースは日本の現状でも多々あるのではないでしょうか。
学生アスリートの進むべき正しい道。模索が続きます。