5月14日、ツイッター経由でこちらの記事を読ませていただきました。
今季の秋田は結果以上に「スタイル」が魅力的だった。彼らは選手が高い位置から相手にプレスをかけ、ミスを誘う。
こちらの部分が気になって、即B2のプレイオフ、熊本@秋田のゲーム2を見ました。
なぜ今シーズン、秋田のゲームを見てこなかったのか。
後悔と、衝撃でした。
鹿屋体育大学がプリンストンオフェンスで巻き起こした旋風以来、そしてそれを上回る衝撃でした。
秋田ノーザンハピネッツ、B2制圧!B1昇格!
と言っても少しゲームを見ただけなので多くは語れないのですが、、、
2017-2018シーズンの秋田は凄まじい戦績でした。
昨季B1で18勝した秋田は、たしかにそれなりの戦力を有していたとは言えますが、それにしても・・・
土日の連勝が難しいとされるBリーグ独特のフォーマットでこれは凄まじい!↓
勝率9割。あり得ない戦績だと思います。
以下、ベーシックスタッツを。
秋田は多くのカテゴリーにおいてB2をリードしたわけではありません。それどころか、重要な数字においてB2最下位だった項目さえあります。
得点とシューティングその1
まず、平均得点はちょうど80。多い方とは言えますが、B2で中の上。
FGアテンプトがかなり多い方で、平均67.1はトップクラス。シーズン計4000を超える試投は、B1B2を含めても7チームしかありません。かなりペースが速い。
FG%は43.7。B2で10位。平凡です。
得点とシューティングその2
意外にも(?)、スリーに重きを置いているわけではありませんでした。その割合は全FGにおいて32.1%。これもB2で10位と平凡。成功率33.9%も7位と、特別なものではありません。
フリースローに至っては、上の表のとおり、成功率63.1%で最下位。。。アテンプトが3位とそれなりに多いですが、とても勝率9割のチームとは思えません。
注目その1-オフェンスリバウンド
2位香川と150本以上の差。平均16本近いオフェンスリバウンドは圧倒的。*B1トップの栃木で平均12.6本。
いかに跳び込んでいるか、セカンドチャンスをものにしているか。
注目その2-スティール
上リンクの記事にも載せられているとおり、ゲーム平均約12本のスティールも圧倒的。
2位青森で7.9本、B1でアップテンポなゲームを展開する千葉で8.5本ですから、非常にアグレッシブ。
ファウルの数もB2で最も多いのですが、ブロックもトップと、攻撃的なディフェンスを身上としています。
個人成績
全選手分はリーグ公式サイトでご覧いただくとして、ここでは昨季から在籍している日本人選手6人のシーズン比較を。ものすごい向上が確認できます。
秋田は外国人も含め、スペシャルな選手がいません。
リーディングスコアラー、チームの顔と言える田口成浩で11.7ppg。昨季は11.5ppg。それでも出場時間が平均7分も減少しているにもかかわらずのこの数字は特筆もの。
*リーディングスコアラーはカディーム・コルビーでした。大変失礼いたしました。
名門洛南からスラムダンク奨学金で渡米した谷口大智。彼のスタッツも大きく向上しました。
中でも興味深いのが、スリーポイントのアテンプト。身長2メートルと、日本人有数のビッグマンの彼が、全フィールドゴール中半分以上をスリーポイントに費やしています(56.2%)。
またブロックが計31本から11本と減少している一方で、スティールが昨季28本から58本と倍増。完全にアウトサイドのプレイヤーに変貌しています。
何より、出場時間がそれほど変わっていないにもかかわらず、フリースロー試投が昨季計わずか8本から50本への増加はもはや異常値としか言えません。
田口、谷口同様、白濱もまた、出場時間が減りながらも得点を伸ばした選手(6→8ppg)。そしてスティール。計34本から79本というのもまた驚きです。
中山、水町、そして保岡。
皆、完全に生まれ変わりました。
これはもう、魔法と言っていいレベルではないでしょうか。
スペイン人ヘッドコーチ、”ペップ”ジョゼップ・クラロス・カナルス
俄然、就任わずか1年目のHC、ペップさんに興味が湧いてきました。
本投稿時点、日本語版ウィキペディアに記載がある、NCAA初の外国人コーチというのは”微妙”ですが(笑)、様々な国でコーチを経験。いったいどこでどうして、誰に師事し、現在のスタイルを構築したのか。
リンク記事に書かれてある通り、「常にこのスタイルでやってきた」とはあっぱれとしか言いようがありません。
日本バスケットボールのサンプル?
過去、いくつかの拙い投稿をしてきました。
>で、日本バスケはどうすれば・・・<エンデバープロジェクト>
>日本の戦い方・ジャパンオリジナルバスケットボールとは・・・
>日本バスケットボールの戦い方・一つの見本~リック・ピティーノ~
個人的に、このペップコーチ率いる秋田ノーザンハピナッツのバスケットボールこそが、もっとも日本らしく、かつ世界レベルに到達しうるスタイルなのではないかと思います。
そのスタイルは、スリーポイントを武器にバスケットボール界に革命を起こしたとされるリックピティーノ、そしてそれを受け継ぐVCU(バージニアコモンウェルス)のゲームを思い起こさせもしますが、スリーにそれほど固執していない、現在のウェストバージニア大学のものにも似ています。
来季の、B1での秋田の戦いぶりは大いに注目したいと思います。もちろん、まずはB2、福岡とのファイナルですね。
リックピティーノのプロビデンスカレッジやニューヨークニックスを見て30年。
サイズや能力で決して突出していないチームが、アップテンポなスタイルで勝つ。
ついに、日本のトップレベルにおいて、非常に魅力的なゲームを拝むことができるようになりました。