NBA選手・八村塁の全ての始まり
2019年4月。ゴンザガ大学3年生のシーズンを終えた八村塁選手は、NCAAカレッジバスケットボールにおける最高の賞の1つ、ジュリアスアービングアワードを受賞し、ESPNが主催する、ロサンゼルスでのセレモニーに出席しました。
*このアワード(賞)は5つのポジションごとにベストのプレイヤーを選出するもので、それぞれに殿堂入り選手の名が冠されています。八村が受賞したスモールフォワード部門のネームになっているジュリアスアービングは、マイケルジョーダンさえもが憧れた、超スーパースター。愛称は"ドクター"J。ほか、ポイントガードはボブクージー、シューティングガードはジェリーウェスト、パワーフォワードはカールマローン、センターはカリームアブドゥルジャバー。
古いバスケットボールファンならば、セレモニー会場でDR.Jが八村の名を呼び、壇上に上がった八村と握手した光景を見た時は、気絶するほどだったのではないでしょうか。そのくらい、ものすごい栄誉でした。
さて、受賞インタビューを受ける八村は、冒頭で「彼(ドクター)の手は大きかった。」と会場を笑わせた後、同会場にいたゴンザガ大学コーチ陣、そして家族に向かって謝意を表します。
もちろん、丁寧に「皆さんに感謝します。」と話しますが、その場所にいない方の名前を1人だけ、あげていました。
「僕の、中学校時代のコーチに。」と。
奥田中学バスケットボール部
坂本穣治氏。
八村塁の名が日本に、世界に知られるようになると、こちらの奥田中学のバスケットボールコーチにも注目が集まり、多くのインタビュー記事がいろんな場所で掲載されたので、ご存知の方は多いかもしれません。
中でも、こちら。
初めてバスケットボール部に入った時、ボールハンドリングが上手くできなかった時にボールを掴ませ、初めてNBAという言葉が口をついたエピソード。
怪我無く、長くNBAキャリアを積んでほしいと話す、愛情あふれるコメントに同意してしまいますが、もう1つ。
「彼(八村)から学んでいる。」という言葉に、この坂本コーチの人間性が詰まっているように思います。
「この人の言うことなら聞いてみようかな」と思ってもらえるコーチにならなければいけません。コートでは座りません。子どもたちと同じように立って汗だくになり、声をからします。「諦め」は許さないと子ども、自らに言い聞かせます。「この子は駄目だ」と決めつけません。関わった子は裏切られても信じ、絶対に味方でいます。公正に接して比較せず、八村、馬場も特別扱いしませんでした。
conocotoより
奥田中学校(ジュニアウィンターカップに出場。月刊バスケットボール)
明成高校バスケットボール部
佐藤久夫氏が率いる明成(現在は仙台大学明成高校)は、もう説明の必要がない強豪高校ですね。先日行われたウィンターカップでも、見事な優勝を遂げました。
現在の高校バスケットボールについては、以前の投稿含めて思うところがたくさんあるので、あまり書きません。
あまりにもレベルが違いすぎる、主にアフリカからやってくる大きい留学生を連れてきて、それが本当に日本バスケットボールのレベル向上につながるのか。たしかに、八村のような選手には不足のないように思えましたが、一番の目的にするべき、「彼らの将来」を最優先にしているのか。疑問に思えます。
明成に関しては、留学生をリクルートしませんね。もちろん、八村兄弟含め、県外から好選手を集めてはいますが、佐藤コーチ率いる明成のバスケットボールは”スマート”。これは、八村以前・以後も変わりません。
高校野球を筆頭に、サッカーやラグビーなどと同じく、「全国大会の価値が大きい」日本のバスケットボールでは、個人技よりもチームプレイが優先されがちです。
これもあって、日本の高校でバスケットボールをした選手、例えば尽誠学園高校出身の渡邊雄太も、NCAAジョージワシントン大学入学時に、「High IQ」と評されていました。セルフィッシュ(わがまま)な、自己中心的なプレイをしないように訓練されているのですね。
明成出身の、八村塁がゴンザガに入学した際も同じでした。
「彼は、バスケットボールIQが高い」と。
(明成のバスケットボールは、一度生で観戦することをおすすめします。)
いまだ、世界で戦える基準にはないとされる日本バスケットボール。
素晴らしい”素材”を生かすことができない(世界で戦えない)選手の例も、少なからずありました。
が、八村塁に限っては、”完璧な6年間”を奥田中学校、明成高校で過ごせたのだと思います。