マーチマッドネス
いよいよ今年も近づいてきました。
NCAAトーナメントに出場する68校の大勢が、この2月に決まります。
しかし、そもそもこのNCAAトーナメントに出場する条件はどうなっているのか。
今回は、(注目の)富永啓生選手率いるネブラスカ大学がNCAAトーナメント出場を果たせるかどうかを含め、”マーチマッドネス””ビッグダンス”への出場資格について。
※すっかり魅了され、かれこれ40年以上NCAAトーナメントを見ていますが、出場校選考も時代とともに進化してきました。
NCAAトーナメントに出場するには
計68校の選出。
その方法は2つだけで、シンプルではあります。
オートマティック(自動的に出場決定)
Autoと呼ばれるこれはわかりやすい。
計32あるNCAAディビジョン1カンファレンスが、レギュラーシーズン終了後にカンファレンストーナメントを実施。優勝校が自動的にNCAAトーナメント出場権を獲得するというものです。
レギュラーシーズンの結果を反映したシード#はありますが、全カンファレンス一発勝負のトーナメントですので、下剋上はここから当然のように起こります。
マッドネスはこのカンファレンストーナメントから始まるとされており、中堅リーグの1つであるミズーリバレーカンファレンス(MVC、ザバレー)は、毎年セントルイスでトーナメントを開催することから、このイベントを”アーチマッドネス”と名付けています。
レギュラーシーズンで負け越していても、カンファレンストーナメントで優勝さえすればビッグダンスに出場できる。
ほとんどのカンファレンスが1校のみの出場となっているため、この方法にも賛否はあるのですが、、、ともあれ、68校中32校がまず決まります。
アットラージ(コミッティによる選考)
「ややこしい」のはこちら、At-Large(計36校)。
最後のカンファレンストーナメントが終了する、3月中旬の日曜日。
12人のセレクションコミッティ(選考委員会)メンバーが、NCAAトーナメト出場校を決定する日。
この日を”セレクションサンデー”と呼び、この”ショー”にてNCAAトーナメント68校、そしてそのブラケット(組み合わせ)が公開されていきます。*コミッティは、選考と合わせ、組み合わせの責も担う。
上に書いた、32校のカンファレンストーナメントチャンピオンは「自動」出場ですが、”アットラージ”36校はどのように選ばれるのか。
> 2024年NCAAトーナメントのセレクションコミッティメンバー
※カンファレンスのコミッショナーや、大学アスレティックディレクター(AD、体育局長)で構成される。ADはヘッドコーチ人事を決定する、コーチ陣の上司にあたる役職ですが、そのサラリーはHCに及ばないことが一般的。ヘッドコーチを退いた方が就くことも多く、上リンクの2024年メンバーであれば、バリーコリア(バトラー大学AD)がバトラー、そしてネブラスカのヘッドコーチを経験しています。
NCAAトーナメント出場校(アットラージ)の選考
では、アットラージ選考の「方法」について。
コミッティは、長年もの間、選考に腐心してきました。
世界中から注目されるマーチマッドネスに出場できるかどうかは、大学、そして選手にとって大きすぎる意味を持つからです。
よって、近年では感覚的なものではなく、より数値化が進んでいます。
勝敗という単純なものはもちろん、RPI (Rating Percentage Index)という数値も有名で、驚くべきことに、NCAAは1970年代からこのRPIを開発していたと言います。
もともとは非公開でしたが、RPIも公開されるようになりました。
・ファクター1:ディビジョン1の勝率。D1以外のゲームは含まれません。ここに、簡単に1勝できるとはいえ、D1校がD2やD3、そしてNAIA校とゲームを組まない理由があります。(公式戦とは認められる。)
・ファクター2:対戦相手であるD1校の勝率。これも大きく加味されるため、特にノンカンファレンスゲームにおいて、楽なスケジュールを組むのは危険とされます。もちろん、きついスケジュールを組んで全敗するのも危険ですが…
・ファクター3:対戦相手の対戦相手の勝率…(疲れてきますね。)
他にも参考にされる数字は、ESPNのStrength of Record(SOR)やBPI(Basketball Power Index)、KPI、そして当ブログでもお馴染みケンポン(KenPom)、さらにはサガリン(Sagarin)。
そして、RPIを進化させた(と言われている)のがNETです。
NCAA NET RANKINGS
最重要とされ、ぱっと見わかりやすいNETの中にある、クアドラント(the quadrant system)について見てみましょう。※最近よく語られます。
(当然)4つのセクションに分かれる、このクアドラントは、オートマティック出場校のシード順位にも使用され、上位2つ(Q1とQ2)のゲームの勝敗が最も重要視されます。
ホーム | ニュートラル | アウェイ | |
Q1 | vs RPIランク1-30位校 | vs 同1-50位校 | vs 同1-75位校 |
Q2 | vs 同31-75位校 | vs 同51-100位校 | vs 同76-135位校 |
Q3 | vs 同76-160位校 | vs 同101-200位校 | vs 同135-240位校 |
Q4 | vs 同161-362位校 | vs 同201-362位校 | vs 同241-362位校 |
NETを再度眺めてみると、必ずしもQ1、Q2勝利がランキングに反映されているとも言えないのですが(あまりにも複合的であるため)・・・
いずれにせよ、単なる勝敗ではなく、その「質」が問われるわけですね。
いかに"Quality Win(質の高い勝利)"を増やせるか、が重要。
重要項目をまとめますと、
- クワドラントゲームの結果と今後のスケジュール
- ニュートラル、アウェイにおけるクワドラントゲームの「質(内容)」
- Non-Con SOS(Non-Conference Strength of Schedule)(ノンカンファレンスゲームの強度)
- 全体的なSOS
- 全てのニュートラル、アウェイゲームの「質(内容)」
- ディビジョン1校以外による敗戦
※「最も権威がある」とされる、APランキングが”表面上は”考慮されていないのも面白い。
富永啓生選手のネブラスカ大学はNCAAトーナメント出場できるか
さて。
注目の、富永啓生選手が所属する、ネブラスカ大学。
※ここではオートではなく、アットラージのケースについて書きます。
この投稿時点でNETランキング53位につけるネブラスカは、Q1で3勝5敗、Q2で3勝3敗となっています。
これはなかなか素晴らしい成績。
通算17勝8敗。ビッグテンでは7勝7敗。
カンファレンスゲームではホーム全勝、アウェイ全敗と、やきもきする時期が続きますが、、、
高い確率で、ネブラスカ大学バスケットボールの、2014年以来10年ぶりとなるNCAAトーナメント出場は実現するでしょう!
それほど、ネブラスカがあげたQ1勝利は大きかった!
> ウィスコンシンの、「前半15点以上リード不敗」記録を120(!)でストップ!
加えてこちらも。
NCAAトーナメント選考委員会(セレクションコミッティ)メンバーの手元には、"team sheets(チームシート)"なるものが置かれます。
> 投稿時点での、ネブラスカのチームシート
良い「成績表」です。
2024年のNCAAトーナメント。
男子では八村塁選手しか成しえていない、日本人選手の出場(2017、2018、そして2019年)。
富永啓生選手がやってくれそうです!
そして願わくば、ネブラスカ大学バスケットボールが成しえていない、NCAAトーナメントでの1勝を!!
何度見てもすごい!
イリノイ(白)の0番は、2024年NBAドラフトで1巡目指名が固いとされる6-6、テレンスシャノン。”やんちゃ系”のシャノンを手玉に取るわ、クリアさせてアイソレーション仕掛けるわでやりたい放題(笑)
190センチに満たない日本人選手の、この舞台での活躍に、あらためて感動です。
<後記>
いかがでしたでしょうか?
あまりにも複雑怪奇なNCAAトーナメント出場校の選考。
ここまでやっても毎年批判されるのがこのセレクション。
よく比較される、日本の高校野球はどうでしょうか?
(夏の甲子園予選がオート、春の選抜がアットラージに似ています。)
「校風」「品位」を加味、とあります。
ちょっと理解できません。。。時代錯誤ではないでしょうか??